高い買い物
最近高いものばっかり買っている。
冷蔵庫、電子レンジ、羽織と帯の仕立てに新品の帯締め。
まだまだ洗濯機と机も買うつもりだし。あとパソコンと液タブ。
私うつじゃなくて躁鬱なのでは?と勘違いするくらいあれもこれも買っている。
勿論破産しない程度にだけど…
とはいえ、手当たり次第に買っているわけではない。
何でもいいわけではないのだ。
帯だって羽織だって、もっと安くていいのがあればそうした。でも帯は今の推しにぴったりだったし、もしも自分の中のブームが去ってもずっとほしかった秋柄だからずっと着られるし。
羽織も、ずっとショールを代わりにしてきたけど、やっぱり手がふさがるし肩から落ちてくるし、ちょっと勝手がよくないからいずれ薄手の物は欲しかったのだ。
着物を着る気力が出てきてからは、ずっとフリマサイトやリサイクルショップのサイトを巡回している。1日の楽しい溶かし方だ。謎のテトリスみたいなゲームをする時間がガクンと減った。でも、たくさんお気に入りして、買うかと言われれば、購入まで進むのは稀だ。
プレタの着物だって買う。アンティークもお下がりも着る。でも、「これだあ!」と思ったものなのだ、どれも。もちろん失敗もあるけどそれは御譲りに出したりなどして新陳代謝している。
ハマりたての頃は、1日中リサイクル着物店をはしごして、ピンとくるものが一つも見つからずに帰ったりした。全然予定のなかったところにふらっと入って「え!?!?!かわいい!!!!!こんなはずじゃなかったのに!!!!!」と言いながら買ったりした。
つまり値段はあんまり関係ない。いくら出してでも「これだ」と思ったものを手にしたいのだ。今回のは確かに高かったけど、あと何軒、あとサイトをいくつ回ったら、ここまで納得いくものに出会えるだろうか?答えは「滅多に出会えない」だ。ここで買っちゃったほうが、だんぜん効率がいい。ことしの夏は今だけだ。勿論破産しない程度にとか考えてはいる。現金一括即決できるものしか買わないと決めている。
着物店のほうも、2週間前に「袋帯が結べないんですう~😢」って習いに来た小娘がまさか何十万ポンと出すなんて思わなかっただろう。
最初は明らかになんか侮られてるなあ、という気がした。プレタの浴衣で来たし。帯は博多だけど言われるまで知らなかったしお下がりだから。小物ばかり勧められて、でも私が12万の帯に悩み始めたあたりから雰囲気が変わった。
何十万を現金で出した時思った。これは危険な遊びだ。実物の手に入るホストだ。大金使うの気持ち良すぎる。私は絶対ギャンブルとホストだけはハマったらダメな人間だ。くわばらくわばら。
言うて私もジャンバの特5みたいな仕事をしていた人間だ。気持ちはすっげー分かるのだ。こういう連日開催のイベントってしんどいよなあ、とか、売上予算ってあるよなあ、とか、囲い込みのためにイベントってほんとに開催してるんだなあ、とか、買うとお茶出てくるんだ~まあ出すか、とか。お客様からの「なる早」ってめっちゃ嫌だよね、すんません…とか。メーカーから支援に来てる人は「ひと押し」するためにいるんだあ、とか、どこまでの「ひと押しになるわがままをどこまで許諾できるか」を押さえているの、マジしごでき。とか。チーム戦過ぎてビビる。帰る時店長さんからあいさつあったし。そら仕立て頼む稀有な若い新規客だもんな私。別に全然富豪じゃないんだけどな。私喋りすぎてたかな働いてた時。うーん。
恐れおののいたのは、「人柄を言い当てること」だ。店長さんに私の買い物のこだわりを言い当てられたのだが、観察されてたんだ、すごいなと思った。私の手に取るもの選ぶもの、発言を聞いて、欲しそうなものを提案する仕事なのね。爛漫ドレスコードレスの響さんがお仕立てする回の誠次郎さんじゃん。接客技能値が高いなー。私はこんな風にできてただろうか。商材の少なさ、私の持ち場の限定さ、それはあったけど。
逆に、接客でみじめになって泣いたことがある。
転勤になって新しい部屋を探していた時、住みたいと思った駅の不動産屋に予約していった。いくつか物件をすすめられ、でも予算内の部屋は条件に合わないし、合う部屋は予算オーバー。一回ポッキリの着物と違って、賃貸はいわばリースだ。安ければ安いほどよい。精神に。
「自分で検索して、気になるのあったら言ってください!」とさわやかに言われ、言うとおりにすると、すぐに大家さんに電話をかけてもらえるが、「すみません、そこはもう埋まっちゃったそうで…」と申し訳なさそうに言われる。これをくりかえす。そして高めの部屋を提案される。でもこっちは予算の線引きがあるから、だんだんみじめになってきてしまって、涙をこらえて、「ごめんなさい、私がもっと高給取りだったら…」と絞り出した。あ、これ悪徳ホストなら風俗に沈められる流れじゃなかろうか?よかった不動産屋で。いやよくないけど。
あきらめて、次に予約していた不動産屋に行く。すると、さっき「埋まっている」と言われた部屋を候補に出された。「え、でもさっき…」と説明すると、大家さんに電話して、「いや、空いてるそうですよ!管理費もこのくらいまけてくれるって」と。拍子抜けした。なんだったんださっきの数時間とみじめさは。そのまま内見して、翌日決めた。その不動産屋さん曰く、「ああ…たまにいるんですよね、電話かけた『ふり』をする同業者…」とのこと。何の得があるんそれ!?!?!!?限界まで絞り出して高いところに決めさせようってこと?それとも仕事サボりたいの?それとも侮られてストレス解消のオモチャにされたのだろうか。
とにかくこの不動産屋さんにはメッチャ感謝していて次引っ越すことがあればできればこの不動産屋さんに相談したいし、最初の不動産屋はあるがままをグーグルの口コミに書いてやろうかと思った。お前死んでも天国に行けると思うなよ。私は平等だから、恩も恨みも等しくしつこいよ。
私は絶対特5の仕事には戻りたくない。