どういうことだ説明しろ蟹木!

メンタルダウン療養記

死生観

死ぬ時は怖いはずだと思う。

苦痛から解放される救いかもしれないけど。

その瞬間は、怖いと思う。

 

 

例えば、アッシュ・リンクス。

マンガ・アニメのBANANA FISHの主人公の一人。

思いっきりネタバレなので、避けたい人はそっと閉じて頂けるとありがたい。

邪道と言われるだろうが、アニメから入った私はアニメ派なのでアニメ前提で書くよ。

 

 

彼の最期は、彼を恨むギャングに刺される。病院に行くでもなく、図書館に行き、席について英二からの手紙を読みながら幸せを感じて逝くというものだった。

物語の結末に、ケチをつける気はない。

原作者の先生の、「言うてアッシュは数えきれないほど人を殺したから…」というのも理屈としてはわかる。(語弊があったらごめん)

 

 

でも、英ちゃんは?

たとえ、アッシュの最期が、英二からの手紙を読みながら幸せなものだったとて。

彼が、例えばもう助からないとして。

英ちゃんなら傍にいることを選ぶであろうことは明白だと思う。こんなにも戦い抜いた優しい人の最期に沿える花が、寂しいものであってたまるかと思う。アッシュだけよければいいんじゃないんだよ。これは、アッシュと英二の物語だ。

 

 

私は、全編を通して英ちゃんのスタンスにかなり共感していた。

一番いいね!と思ったのは、シンに事情を話すシーン。英ちゃんはあっさり話すのだ。

アッシュは、シンに事情を話すべきではないと考えていた。後戻りできない道に巻き込んでしまうことが明白だからだ。

でも英ちゃんは、シンの誤解を解きたかったし、協力を求めたかった。英ちゃんの中では明確に優先順位がある。

アッシュは皆を助けようとしたし、実際彼の能力と頭脳ならできるかもしれない。そして、とりわけ英二のためなら自分が犠牲になることは厭わない。英二が助かるなら俺は死んでもいい。そう思わせるシーンが多々あった。

でも、英ちゃんは違う。自分も、アッシュも、両方生かそうとする。一緒に日本に行こうと言った。英ちゃんはわかっているのだと思った。僕の幸せでも、君の幸せでもない。僕たちが幸せでなければ意味がないと。だから、それ以外は優先順位が明確に下がるし、知り合いを「巻き込む」ことも厭わない。英ちゃんは、プレシャスシナモンロール・エゴイストだと思う。だけど、私は英ちゃんのそういうところがたまらなく好きで、そして、共感する。

 

 

たとえ、どんな形であれアッシュが死ぬとして。

英ちゃんは、その時傍にいられなかったことを悔やむと思うのだ。おそらく人生で一番恐ろしいその時に独りにしてしまったことを。

私は他人の死にろくに触れたことがない。でも、入院したりぶっ倒れたり、死ぬかもと思ったことは何度もある。希死念慮で未遂したことも。これはちょっと違うか。

例え敵を何人殺していたって、守れなかった仲間に顔向けできないと思っていたって、アッシュは苦境を戦って戦って、そして誰よりも優しかった。殺したって、それは死ぬ覚悟のあるやつを殺したのだ。アッパーシューターなわけじゃ決してない。そして、仲間の死の責任を取って何か辛いことをすると言ったって、仲間はそれを望むだろうか。たとえば、ショーターが。そんなわけない。ショーターに失礼だ。

 

 

最期アッシュは幸せだったというけれど、彼の強靭な精神力がそうさせたかもしれないけれど、血の引いていく感覚、臓器が動かなくなっていく感覚、指が冷たくなっていく感覚。怖くないわけあるかよ、と思うのだ。いや全然分かんないんだけどさ、瀕死になったことないし。

ともかく、この優しい大切な人を、逝くとてひとりで逝かせたくなかったと思うんだ英ちゃんは。私ならそうだ。

 

 

物語で、誰か大切な人が死んで、それを乗り越えていく描写がよく見られる。新しいパートナーが出来て。未来に向かって。

は~~~~????????って思う。

だから、漫画で後日譚を読んだとき、そうだよね!と思った。一生引きずって何が悪いんだ。最近こんなこと言ってた人いたな。ブルーピリオドか。

魂の半分を失って、一生寂しくて、何が悪い。それこそアッシュが望まないって?そんなの関係ねえんですよ。話が違うだろ。

 

 

勝手に重ねて恐縮だが、私が英二の立場だとして、アッシュのような人がいる。

その人がなくなったら、後を追おうと思っていたけど、頭がいいアッシュ(仮名)には見透かされ、何があっても自死しないことを約束させられた。これは、守らなければならない。

だから、アッシュがなくなったら、あとは余生だと思っている。ただの余生。どんなに楽しみがあろうとも、英ちゃん同じく、優先順位がはっきりとあるから、何もアッシュを超えることはないだろう。

近くにいたら傷になるから離れろと言われたことがあるが、断った。英ちゃんもきっとそうするだろう。その傷は唯一無二の傷。大切なアッシュがいたという傷だ。パワハラ上司に痛めつけられた心の怪我なんかとは全然ちゃうねんぞ。

 

 

アッシュになにかあったなら、八門遁甲こじあけてアドレナリンを全開にしてNYに行くだろう。なんのための過集中だって、なあ。アッシュは一貫していて美しいが、私はエゴイストな英ちゃんに共感する。